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絶対観たいインディアン

夢へ向かって全力疾走~映画「世界最速のインディアン」 2006/12/25


http://www.janjan.jp/culture/0612/0612216844/1.php


 御年68歳、英の名優アンソニー・ホプキンスが、68歳にしてバイクの世界最高時速305.89kmを打ち立てたバート・マンローの実話を演じたヒューマン・ドラマだ。監督は「スピーシーズ 種の起源」「ダンテズ・ピーク」「13デイズ」と幅広い作風で知られるロジャー・ドナルドソン。

 ニュージーランド南端の町で、ひたすら「1920年型インディアン・スカウト」の改造を試みるバート。早朝から爆音を立てて作業を始め、近隣住民を困らせる。隣家のレモンの木に小便をかけ、「人間の小便は一番の肥料だ」と豪語する。荒れ放題の雑草への苦情に、草にガソリンをまいて火を付ける。ボヤ騒ぎを起こし消防車まで出動させる始末だ。しかしなぜか、破天荒なバートの人柄に、周りの人々は魅了されている。特に隣家の男の子は、バートのことが大好きなのがほほえましい。

 年金暮らしのバートは、心筋症と前立腺の病気を抱えている。だが、米ユタ州のボンヌビル・ソルトフラッツで行われるレース「スピード・ウィーク」への出場の夢を捨てきれずにいる。自分の年齢や病気を考え、ついに米国行きを決断。資金がなく、家を抵当に入れ、銀行から借金をして、ニュージーランドから貨物船にコックとして乗り込み、愛車「インディアン」とともに旅立つ。

 ロサンゼルスに入港したバートには、数々のカルチャー・ギャップが待ち受ける。がめついタクシー運転手に始まり、女装したモーテルのフロント係、中古車販売店の店主。バートは自分で作った牽引器具で「インディアン」を引っ張り、中古車で目的地へ向かう。だが、事故で本物のインディアンに助けられる。修理に立ち寄った家で一夜を過ごした未亡人、違反に目をつむる寛大な警官……バートの人柄に引き込まれる人々が描かれる。

 モーター・スポーツの聖地、ボンヌビル・ソルトフラッツに到着したバートには、さらに数々の難関が待ち受ける。レースへの出場未登録、整備不良、年齢オーバー。果たしてバートは、愛車「インディアン」とともに世界一の夢を達成できるのか?

 日本人に馴染みのない「スピード・ウィーク」の説明が、あっさりしていて分かりづらいこと、登場人物がいい人ばかりで、人間の負の部分を描いていないのが難点。とはいえ、アンソニー・ホプキンスの人柄と演技も手伝い、心温まるドラマとなっている。欲を言えば「スピード・ウィーク」に参加した他の車種の走りも見てみたかった。「インディアン」の全力疾走には拍手を送りたい。主人公は老人であるが、夢を忘れた若い人たちに、ぜひ見てもらいたい作品である。

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「世界最速のインディアン」(2005年、ニュージーランド・米)

監督:ロジャー・ドナルドソン
主演:アンソニー・ホプキンス
   
 07年2月、新宿・テアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ(東京)ほか全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

(藤枝正稔)

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