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急浮上した「韓国併合100年謝罪論」

急浮上した「韓国併合100年謝罪論」

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20090713-01/1.htm

「竹島の領有権放棄」
「北朝鮮への重油20万t提供」
まで主張する東大名誉教授の問題論文が韓国に〝飛び火〟
急浮上した「韓国併合100年謝罪論」は日本・韓国・北朝鮮の国民を不幸に陥れる

文=櫻井よしこ(ジャーナリスト)

 日本人はどこまで「謝罪」が好きなのだろうか。著名な歴史学者が「韓国併合100年おわび論」を主張し、大学教授や弁護士などが共同代表を務める「韓国併合100年市民ネットワーク」なる組織も設立されている。必要な謝罪なら大いにやればいいが、不必要な謝罪は国家の行方を誤らせることになる。奇妙な運動を支える歴史観のどこに問題があるのか、櫻井よしこ氏が論破する。

 来年は日本が1910年に朝鮮半島を併合して100年目に当たることから、日本政府に新たな謝罪や補償などを求める動きが出てきている。その中心となっているのが東大名誉教授の和田春樹氏だ。

 氏は『世界』4月号に「韓国併合一〇〇年と日本 何をなすべきか」と題した論文を掲載し、そのなかで米国議会が「ハワイ王国転覆」から100年にあたる1998年に謝罪決議を採択したことを引き合いに出し、日本も国会決議、総理談話などで〈一段進んだ歴史認識が示されるのがのぞましい〉と書く。さらに「独島」(和田氏は竹島をこう呼ぶ)の領有権放棄、慰安婦問題、強制動員労働者問題の解決を図ることを主張している。

いずれも正確な事実関係というよりも、韓国が主張する「事実」に基づき、韓国側に身を置いた非常に不公正な内容である。本誌前号の黒田勝弘氏のコラム「ソウルの風」によると、この和田論文が韓国でも話題になっているという。その影響は深刻だ。

 こうした動きが火種となり、対北朝鮮で協力関係を強化している日韓の関係が悪化することになれば、喜ぶのは北朝鮮とそれを支持する人達だ。

 和田氏は北朝鮮政策については〈拉致問題至上主義の呪縛〉と日本の対応を批判し、〈重油二〇万トンの提供を拉致問題を理由にして拒否してはならない〉と書く。しかし、拉致は金日成、金正日の2代にわたり、北朝鮮が国の指令として行なったことだ。これについてはすでに複数の元北朝鮮工作員の証言がある。日本語の書籍としてまとめられているものも少なくない。和田氏がそれらについて知らないとしたら、それは学者としての資質を疑わしめるものだ。

 万一、こうした証言や情報を知ったうえでなお、拉致問題を横に置いて北朝鮮に支援せよと主張するのなら、和田氏は国家の責任が国民の生命、安全と領土領海を守ることにあるという点を無視しているのであり、話にもならない。北朝鮮に毅然と対処し、拉致された自国民の救済を第一に置くのは、主権国家として当然のことである。

また日朝交渉は〈対話からはじまり、対話におわらなければならない〉とも書くが、その言葉はそのまま北朝鮮に向けるべきではないか。

 北朝鮮では人口の1%、20万といわれる人々が強制収容所に入れられ、専制政治の下で虐待され、その多くが命を失った。また、悪政によってこれまでに300万人が餓死したといわれる。こうした人権状況への和田氏の批判を私は知らない。北朝鮮の現体制を是認するような学者が東大名誉教授の職にある日本の現状こそ憂うべきものだ。

 さらに和田氏は〈独島の韓国領有を承認する〉べきとしたうえで、〈このさい韓国が日本海という国際名称の変更を求める運動を断念すると言ってくれることもありがたい〉とも書く。氏が竹島を韓国の領土とする根拠は歴史的事実に反する韓国側の主張そのままである。そもそも、「日本海」は古くから国際的に広く認められてきた国際名称である。その変更を求める行為自体が、国際常識に反することなのであり、韓国が変更を断念するのは当然なのだ。

韓国で生まれつつある 自尊史観見直しの気運

 左翼系の学者やメディアによる歴史歪曲は、韓国においては日本よりさらに激しいのだが、その韓国においてさえも、経済史の視点から歴史を見直す動きが生まれている。昨年春、ソウル大学の李榮薫教授らが、『代案教科書 韓国近・現代史』を執筆した。私も昨年夏に李教授にソウルでお目にかかり、意見交換をした。同書は日本でも『大韓民国の物語』(永島広紀訳、文藝春秋)として出版されている。

 李教授は、韓国では日本の植民地支配を〈収奪〉とのみ認識し、高校の歴史教科書には〈世界史において比類ないほど徹底的で悪辣な方法で我が民族を抑圧し、収奪した〉などと書かれていることを批判的に取り上げている。

 李教授は経済学者として、日本の植民地支配が年率3・7%の経済成長を朝鮮半島にもたらした、これは、1・3%の人口増加率を上回るもので、〈工場などの生産施設や、鉄道などの社会間接資本〉〈近代的な法と制度、そして市場経済のシステム〉〈高い教育水準をもつ人的資源〉を遺産として残したと、緻密な統計を示して指摘している。

李教授は、韓国の教科書には日本の植民地時代に関して、大別して4つの捏造があるという。€農民の土地の4割が日本人に奪われた、 毎年、収穫されるコメの半分を日本が奪った、¡数十万人の女性が挺身隊に駆り出され慰安婦にされた、¤650万人が強制連行され奴隷のように酷使された。学校でこの4つを教える時、〈教師は今にも泣きそうな顔になり、生徒も涙した〉と教授は書いている。こうした教育の結果、韓国人の心には反日感情が深く刻まれていくのである。

 しかし、李教授が当時の資料を調べると、このすべてが誤りであることが明らかになったという。例えば農民の土地台帳には韓国の農民の土地が奪われ、日本人のものになった例は1例もなかった。米は確かに5割が日本に移出(当時は輸出ではなく移出と言われていた)されたが、その理由は、日本内地の米価が30%ほど高かったためだった。韓国の農民がより高い収入を得るために売却したもので、それにより韓国の農村経済はかなり底上げされた。

 挺身隊と慰安婦が無関係であること、650万人の強制連行が事実でないことも判明している。李教授らはこれらの事実をもとに『代案教科書』を書いたのである。

植民地支配より長い 国交正常化時代の絆

 韓国人の歴史観が、どれだけ事実とかけ離れた誤った認識にもとづいてつくられてきたことか。そこには「北朝鮮を善、韓国を悪」と見る左派勢力の存在がある。

 例えば、韓国の著名な学者らが、北朝鮮を〈米帝と反民族・反革命勢力の支配下にある南朝鮮を解放させる「民主基地」である〉と書き、金大中や盧武鉉ら過去の大統領を含め、多くの左翼政治家らは、韓国は〈間違って作られた国〉という歴史認識を持つ。こうした根本的な歴史観を李教授は深く分析し、それを改めない限り、韓国の本当の発展はないと言うのである。

 韓国の歴史教科書に先の4つの捏造事実が登場したのは20年ほど前からだ。そこには日本の左翼運動が影響していることも明らかである。

 例えば慰安婦問題に火をつけたのは朝日新聞であり、その歪曲報道をそのまま韓国の左派勢力が利用した。このことがどれだけ日韓関係を歪め、悪化させたか。和田氏らを中心とする「韓国併合100年」の運動も、さらに日韓関係を歪める可能性は否定できない。

 李教授の立場は決して日本に偏ったものではない。慰安婦問題では日本軍による強制連行の事実はなく、女衒によるものだったとしつつも、慰安所制度そのものは痛烈に批判している。李教授の指摘は日本にも韓国にも鋭く突き刺さるだろう。だが、事実に真摯に向き合ってこそ真の和解と友好は始まる。

 日韓のこの100年に36年間の植民地支配があったことは確かだが、1965年の日韓基本条約による国交正常化からすでに半世紀近くが経過している。植民地時代の諸問題もその時に処理された。植民地支配よりも、共に助け合って歩んできた時間のほうがはるかに長いのだ。今なすべきは、一方的な「反省」や「謝罪」ではなく、日韓関係をより深め、北朝鮮に虐げられている人々を解放するために協力していくことではないか。

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