正論
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090823/elc0908232354019-c.htm
【09衆院選】証言・政権交代(4)塩川元財務相 「民主は細川政権の二の舞」
「政権交代は国民の政治選択のひとつとしては良いことだと思うが、(野党から与党になる)対立政党がきっちり成長しているかどうかが重要だ」と語るのは、自民党政権で数々の大臣を歴任した塩川正十郎元財務相(87)。
「自民は与党ボケしているが、民主にも問題がある。彼らは安全保障など国の安全についての意見がまとまっていない。寄り合い所帯で政権を担うと、細川(護煕)政権の二の舞いになるのではないか」
《非自民・非共産の野党が連立して誕生した細川政権は、発足当初は高い支持率だったが、参加各党の政策の違いだけでなく、新生党(当時)の小沢一郎氏と官房長官だった武村正義氏ら上層部の意見の食い違いもあり、1年足らずで崩壊した》
今回の選挙で与野党が逆転し、民主政権ができたとしても、すぐに政権が崩壊すれば議会政治自体への不信が芽生えることが最も懸念することだという。「『もう議会制民主主義はだめだ。もっと国家主義的な政治をやれ』という声が出てくる可能性だってある。それは独裁政治にもつながりかねない危険なことだ」
一方で自民について、「今回の選挙で大幅に負ければ再起不能になり、分裂することだってありうる。何とか与党として残ってほしいが、仮に野党になるにしても、今回の選挙で今後に向けた体力を維持できるような闘い方をすることが大事だと思う」。
では、自民に処方箋はあるのか。「自民の強みは、プロセスも明らかにしながら物事を進める実行力。『あれもこれもします』ではなく、政策について『こうしてやります』と具体的な方法の提示が大事だ」
細川政権で下野した自民。1年足らずという短期間だったにもかかわらず、所属議員には大きな変化があった。中央省庁の官僚は与党時代とは手のひらを返すような態度になり、自民議員に対し法案説明などに来ることはめっきりと減った。また、同時に政治資金パーティーの券が売れなくなった。これまで自民がいかに業界団体頼みの選挙をしていたのかということを思い知った議員は多い。
ただ、下野して気づいたこともある。塩川氏は野党議員に求められる資質として、「批判精神」と「評価能力」をあげた。与党政治の問題点を正しく評価したうえで、対案も含めた丁寧な批判を行う能力が求められるからだ。「こうした能力があれば、野党も、やりがいのある仕事かもしれない」という。その一方でその能力がない議員は、いずれ淘汰(とうた)されるとみる。「政策本位で当選した能力ある議員は下野は恐れていないと思う。下野すれば、自民議員が、きちんとした政治家なのか、それとも利権政治家かを峻別するきっかけになるだろう」。
塩川氏は今回、初めて衆院選の投票に行くことになる20~24歳の有権者の投票率に注目している。その数字が政治そのものに対する信用の度合いを表すと考えるからだ。「若者たちに『投票にいってもしょうがない』と思われては議会政治に将来はない」と断言した。
◇
しおかわ・まさじゅうろう 大阪府東大阪市生まれ。徴兵され、学徒出陣も経験。布施市(現・東大阪市)助役などを経て、昭和42年の衆院選で初当選し、当選11回。総務会長など自民党内の要職も歴任したほか、小泉純一郎内閣の財務大臣などを務めた。平成15年に政界を引退。東洋大総長。
| 固定リンク
« 翼賛会 | トップページ | 目障りなスノッブ »
最近のコメント