ネット書き込み はびこる中傷への警告
ネット書き込み はびこる中傷への警告
2010年3月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010031802000078.html
インターネットの書き込みも、名誉棄損の基準は新聞などと同等だ-。最高裁の初判断は、根拠のない中傷などが氾濫(はんらん)する現状への警告だろう。情報の発信者もあらためて責任を自覚してほしい。
飲食店の運営会社を「母体はカルト集団」と男性がホームページに虚偽の書き込みをした。名誉棄損罪に問われた男性の上告を最高裁は棄却し、有罪が確定する。
一審はネットでは反論が可能なことや、信頼性が低いことなどを理由として、男性は無罪だった。二審は逆転有罪で、最高裁もそれを支持した。
実際に、ネット上で反論しても、損なわれた名誉の回復は容易ではない。新聞通信調査会によれば、メディアの信頼度は「新聞」が七〇・九点、「民放テレビ」が六三・六点に対し、「インターネット」が五八・二点と、「雑誌」の四六・四点をしのいでいる。信頼性が低いとはいえまい。
重要な点は、最高裁が「ほかの表現手段と比べ、より緩やかな要件を適用すべきでない」とし、名誉棄損が成立するハードルを新聞やテレビなどのメディアと同等と判断したことにある。
名誉棄損が罪にならない場合は、公共性がある内容で、公益目的で発信され、情報が真実なときだ。誤報であったケースでも、真実だと誤って信じたとする「相当の理由」などが必要だ。
今回の判断も「(誤信について)確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限る」と示した。事実無根の情報や中傷であふれる現状に歯止めをかけることになろう。
名誉棄損やプライバシー侵害など、ネット上での被害やトラブルは深刻だ。法務省によれば、ネットでの人権侵犯で救済に乗り出した件数は、二〇〇八年が五百十五件と〇五年に比べ、約二倍になっている。
勝手に「交際相手を求める」などと他人の住所や電話番号を掲載したり、罪を犯した少年の写真や実名を掲載した悪質なケースなどもある。
背後には無数の被害が潜んでおり、泣き寝入りしている人々も多いはずだ。いったんネットに情報が書き込まれると、瞬時に不特定多数の者が閲覧できる状態になる。名誉やプライバシーが踏みにじられては取り返しがつかない。まさにネット時代の暗部である。
最高裁の判断は、匿名性という“あぐら”の上で、無責任な情報を垂れ流す者への戒めだ。
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