ハロランの眼 対等な日米関係へ10の提言
【日米同盟】 ◆対等な日米関係へ10の提言
(産経 2009/12/22)
【ハロランの眼 太平洋の真中で】
日本の鳩山由紀夫首相は9月中旬に就任して以来、米国との「対等」な外交・安全保障関係を追求すると繰り返し主張している。鳩山氏はしかし、日米 同盟に関し「積極的に提案する」と唱える以外、自らの政府がその実現に向けて何をするのか説明していない。そこで、以下、対等な同盟にならしめるために日 本がなし得る十の提言を行う。
一、自身の防衛に全責任を持て。それには、日本に「国際紛争を解決する手段として」の「武力の行使」を禁じた有名な憲法第9条を改正する必要があ る。そうした防衛の大半は米軍によりまかなわれている。
二、海上防衛力を強め、外洋、特に原油や他資源の日本への流れに死活的に重要なマラッカ海峡と南シナ海に戦力を投射せよ。これらの海上交通路は 今、おおむね米軍が守っている。
三、日米安保条約を改定し、米国が日本防衛を支援するのを余儀なくされているのとまさしく同様に、日本が米国を防衛しに来ることも義務化せよ。明 らかに不平等な現行条約では、日本は米国防衛に貢献する義務は負わされていない。
四、防衛費を現在の年500億ドルから2000億ドルに4倍増させ、米国と同じ国民総生産(GNP)対比4%に引き上げよ。日本は目下、GNPの 1%しか防衛費にかけていないから確実に増税を迫られよう。
五、自衛隊を現在の24万人(定員)から米国と同じく人口に釣り合った88万人に増員せよ。自衛隊は長く隊員の定員充足に苦労しており、日本は徴 兵という手段に頼る必要があるかもしれない。
六、沖縄を含む日本から全部ではないにしても、ほとんどの米軍を追放せよ。これらの米軍基地は、強化された自衛隊には必要であり、したがって民用 には転換できないだろう。鳩山氏に近い助言者である寺島実郎氏(日本総合研究所会長)は米軍のグアム、ハワイ移転を提唱している。
七、米国の核の傘、すなわち拡大抑止を日本から外せ。寺島氏はそれを「明白な冷戦の遺物」ととらえ、代わりに、日本としては、オバマ米大統領が唱 道する核兵器なき世界をあてにするよう勧めている。氏はしかし、日本が「核武装」すべきか否か黙している。
八、ミサイル防衛の開発を米国から引き継げ。過去10年間の大方において、米国はこの事業を主導し、日本の支援を受けつつ資金も出し、北朝鮮によ る発射に関する情報も日本と共有してきた。対等な関係を追い求める鳩山政権はその協力に終止符を打ちそうだ。
九、米中央情報局(CIA)や英情報局秘密情報部(MI6)のような部門を創設し、政治、経済、軍事情報を収集、分析せよ。日本は現在、内閣付属 の不十分な調査室と、米国が自発的に分け与えてくれるだけのものに依存している。
十、国際交渉の先頭に立て。日本は過去半世紀にわって一、二の例外を除き、交渉の厄介な仕事を米国や欧州、そして最近では中国に主導させてきた。 日本はこれらの諸国と対等たらんとするのであれば、進み出て外交上のリスクを取らなければならないだろう。
鳩山氏が求める対等な関係が達成された暁には、台頭する中国とよろめく米国と自ら見なしているものの懸け橋に日本がなれる、と氏は言う。胡錦濤・
中国国家主席、オバマ米大統領のいずれも相互の懸け橋の必要性を感じているような兆候を示していない以上、それは傲慢(ごうまん)かもしれない。
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【プロフィル】リチャード・ハロラン
ジャーナリスト。1930年、米ワシントンDC生まれ。60、70年代にワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙の東京支局長を歴任。 98年、勲四等瑞宝章を受章。著書に「アジア目撃」(産経新聞に連載)など。ハワイに在住し執筆活動中。
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