京都人の民度
8月9日
2011.8.9 03:04
京都をひいきにする文化人を挙げればきりがないけれど、昨年亡くなった文化人類学者の梅棹忠夫の思い入れは尋常ではなかった。生粋の京都人である梅棹は「今でも日本の首都は京都」と公言していたほどだ。
▼「すべての文化が、京都の文化が標準になっている。これにいかにかぎりなく接近するかというのが、日本のすべての文化の方向である」「京都がほろびるときは日本の文化もほろびるときなのだ、という理解まであるのではないか」。
▼梅棹がここまでたたえた文化都市らしからぬ出来事だった。東日本大震災の津波で倒れた岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」の松を、京都の伝統行事「五山送り火」の「大文字」で使う計画がとりやめになった。放射能汚染を心配する声が、寄せられたからだという。
▼もともと大分市の美術家の発案で、松から作った数百本の薪には、被災者が亡くなった家族への思いや復興への決意を書き込んでいた。大文字を主催する地元の保存会と京都市がすべての薪を検査して、放射性物質がないことを確かめたにもかかわらず、最終的に風評に屈した形となった。
▼もちろん大多数の京都市民の本意ではないだろう。美術家はとりやめに理解を示したというが、どうも釈然としない。何より陸前高田市民に対して失礼だ。ニュースを知ってからというもの、街にあふれる「心をひとつにしよう」といった標語や「絆」の文字が、どうしても嘘っぽく見えてしまう。
▼盆の大文字の送り火は、室町時代から続く宗教行事だという。おびただしい観光客が訪れる、近年の大文字のあり方に批判的だった梅棹なら、今回の騒動をどのように断じただろうか。聞いてみたかった。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110809/trd11080901240001-n1.htm
五山送り火被災松使用中止 抗議・非難の電話殺到
2011.8.9 01:23 (1/3ページ)
京都市内で16日に行われる「京都五山送り火」の一つ「大文字」で、東日本大震災の津波で流された岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松で作った護摩木を燃やす計画が放射能汚染を不安視する声を受けて中止となったことに対し、京都五山送り火連合会の事務局がある京都市文化財保護課に非難が殺到している。
計画の中止が報じられ、休日が明けた8日朝から同課では電話が相次ぎ、約100件に上った。その大半が「被災者の気持ちを無駄にするのか」「京都のイメージダウンにつながる」などと計画中止を抗議、非難する内容だった。
さらに市政情報総合案内コールセンターにも7日に45件、8日に166件(午後5時まで)の電話とメールが寄せられ、9割以上が中止反対の意見だった
今回の中止について、福島県飯舘村職員の杉岡誠順さんは「放射能汚染を恐れる気持ちをもつ人がいるのは致し方ない。ただ、今回のことで東北の人々は大変ショックを受けた。中止反対の声もあると聞くと励みになったが…」と話した。
被災者に犠牲者の名前や祈りを書き込んでもらった護摩木は約400本集まった。京都市などの検査で放射性物質は検出されなかったが、汚染を心配する声を受けて大文字保存会が中止を決定。護摩木は8日夜、陸前高田市内で迎え火として燃やされた。
保存会のメンバーは現地で護摩木を写真撮影しており、京都市で別の護摩木に書き写したりして16日の送り火で燃やすという。
被(ひ)曝(ばく)医療に詳しい鈴木元・国際医療福祉大教授(放射線疫学)は「放射能を怖がるレベルが極端になりすぎている。護摩木から放射性物質が検出されていないのに、中止を求めたりしたことは過剰反応に間違いない」と話している。
被災地差別」と京都市に送り火の松で抗議300件
2011.8.8 22:00
京都市で16日に行われる「五山の送り火」に岩手県陸前高田市の松を使う計画が、放射性物質の汚染を不安視する声を受けて中止が決まった問題で、京都市に8日夕方までに、300件以上の抗議電話やメールが寄せられたことが分かった。
市によると、「被災地を差別する行為」「中止を撤回すべき」「京都市民として恥ずかしい」などで、電話が一時パンク状態になった。
松から放射性物質は検出されていないが、「大文字保存会」(京都市)が中止を決定。門川大作市長は取材に対し、松の一部を保存するよう陸前高田市長らに働き掛けたことを明らかにした上で、「中止決定は大変残念で、寂しく思う。(保存会とは別に)京都市役所前の広場で送り火をしたい」と話した。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-08X195/1.htm
岩手・陸前高田の松、地元で迎え火=放射能懸念、京都の送り火中止で
東日本大震災による津波で流された岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松を使った迎え火が8日夜、同市で行われた。「パパへ、今までありがとう」「姉ちゃんの料理おいしかった」などと、被災者がメッセージを記したまきは読経の後、点火され、夜空に向かって鮮やかな炎を上げた。
まきは当初、京都の伝統行事「五山送り火」で燃やされる予定だったが、福島第1原発事故による放射能汚染を懸念する声が相次ぎ、中止された。
母と姉を亡くした斎藤哲夫さん(51)は「鎮魂を祈った。京都でできないのは残念だが、たくさんボランティアが来てくれたから」と燃えるまきを静かに見詰めた。
五山送り火を主催する「大文字保存会」の松原公太郎理事長も立ち会い、「中止は苦渋の決断だった」と話した。まきに記されたメッセージは写真に撮り、京都で別のまきに書き写して16日に行われる送り火で燃やすという。
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