志願者ゼロ
海洋監視隊「志願者ゼロ」は「愛国心」と無関係(2)=中国
2013年度の中国国家公務員試験の応募が締め切りを迎えた。国家公務員局が10月24日に発表したデータによると、応募者がゼロだった役職は132あり、うち5つが国家海洋局東海分局が募集した、東シナ海での巡視活動に携わる「海洋監視船船員」だったことが注目を集めた。ネットでは、志望者がいなかったのは、尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題の影響であると推測する声が上がっている。中国網日本語版(チャイナネット)は1日、「志願者ゼロ」は「愛国心」と無関係だと論じる記事を掲載した。以下は同記事より。
また、海洋監視隊第4支隊の「海洋監視船船員」も、3名の採用枠に対し、資格審査に合格した応募者は41名もいた。このことからわかるように、実際は30の役職に対し、「志願者ゼロ」だったのはわずか5つで、「海洋監視隊への志願者はゼロ」ということでは決してない。
では、この5つの役職にはなぜ志願者がいなかったのか。まず考えられるのは、応募システムの審査プロセスだが、資格審査に合格できなければ、合格応募者として最終的な採用試験には参加できないため、対外的には応募者はゼロだと公表されるが、応募者が1人もいなかったわけではない。
次に、同じ「海洋監視船船員」であっても、この5つの役職は要求条件が高いのだ。例えば、「甲種船長(一級)免許」や「甲種一等航海士免許」を持っていることが求められており、新卒の大学生ではこれらの免許を持っている人はほとんどいないだろう。そのうえ、これらの免許を持っている人のほとんどがすでに、国家公務員試験の年齢の上限35歳を超えているのではないだろうか。あるいはすでに満足のいく所得と安定した職業を持っており、海洋監視隊に魅力を感じないのかもしれない。
これらを総合して見ても、海洋監視隊が「志願者ゼロ」だったことと「愛国心」とはまったく関係がなく、採用側と応募側双方の選択によって発生した自然な現象である。国家公務員試験は狭き門だが、毎年、応募者が1人もいない役職が必ずある。それに対し、過敏に反応する必要はまったくない。(完結)
中国、尖閣攻防の士気凋落 海洋監視船の志望者は「ゼロ」
中国は連日、沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海や接続水域に海洋監視船や漁業監視船を侵入させ、主権侵害を続けている。その背後に中国海軍が控えているのは明白で、日本の海上自衛隊は万全の警戒態勢を敷いている。イージス艦や潜水艦などの装備や練度では、圧倒的に海上自衛隊が優勢といわれるが、実は士気・モラルの面でも人民解放軍の大劣勢が指摘されている。
「東シナ海の監視船員、中国で志望者ゼロ」「尖閣問題で忌避か」
中国で最近締め切られた国家公務員試験の申し込みで、東シナ海での巡視活動に当たる国家海洋局東海分局の海洋監視船員を6人募集したところ「志望者ゼロ」だったと、日経新聞が先月29日報じた。尖閣をめぐり日中対立が激しくなるなか、危険と判断する若者が多かったとみられる。
国家海洋局は、中国の最高行政機関・国務院につながる組織だが、人民解放軍の影響を強く受けている。海洋監視船は基本的に、軍艦を白く塗っただけとされる。
一方、日本の海を守る海上保安学校の入学試験は春と秋の2回実施され、過去2年は春秋合わせて約1万人だったが、尖閣周辺海域での海上保安官の活躍に刺激されてか、今年度は前年の1・5倍、過去最多の約1万6000人に急増した。
中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「志願者ゼロとは、実に分かりやすい。中国人の民族性を表している」といい、こう続けた。
「中国軍の士気はもともと低い。昔から言葉だけは勇ましいが、日中戦争でも『突撃!』と命じた司令官が真っ先に逃げていた。兵隊も逃げると後ろから撃たれるから従軍していた者も多い。日本人の持つ『使命感』や『忠誠心』はほぼ見られない。現在の海洋監視船も、軍からノルマを与えられているうえ、日本の海上保安庁が攻撃してこないと知っているから領海侵犯を繰り返している。ただ、『日中が激突すれば危ない』とも分かっているため、若者は志願しなかったのだろう」
中国軍人の士気・モラルについて、陸軍士官学校を卒業後、戦闘機パイロットとして特別攻撃隊「神鷲124隊」隊長を務め、戦後は復員省史実部や法務調査部に勤務した古野直也氏は著書「中国幻想」(K&Kプレス)で、こんなエピソードを紹介している。
《1922年(注、24年との文献あり)に孫文は広東に黄埔軍学校(=中華民国陸軍の士官養成学校)を創立した。(中略)蒋(介石)校長は生徒への訓示で、『よく勉強して軍務に励めば大金が手に入って諸君の生活は向上するであろう』と述べている》
士官といえば幹部軍人である。その候補生に心構えを説くのに、金銭を餌にするしかなかった、というのだ。
79年、中国のベトナム侵攻で中越戦争が勃発した。中国は人海戦術で圧倒しようとしたが、ベトナムは米国相手の戦争で戦闘慣れしており、中国軍に甚大な損害を与えた。結局、中国軍は1カ月足らずで撤退した。
中国は「わが国が勝利した」と主張するが、各国の軍事専門家は「ベトナムが中国を痛い目に遭わせて追い払った」「中国軍は戦闘経験も未熟で、兵士の士気も低く、略奪行為も多かった」と分析している。
現在、中国軍は近代化された。ただ、軍の腐敗・規律の低さは深刻だ。
今年3月、軍所有地や兵舎管理などを担当する中将が解任された。当時の報道では、中将は約20億元(約260億円)という上海の軍用地や住宅を無断で転売し、巨額の利益を得ていたという。
直後、胡錦濤国家主席は全国人民代表大会の軍代表団全体会議で「軍隊の反腐敗を強化し、軍隊の党組織と幹部の清潔さを維持しなければならない」と訴えた。
沖縄・南西諸島地域の領空を守る航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将は「日本は戦闘機や護衛艦などの装備面でも優れているうえ、士気の面でも中国とは比較にならない」といい、こう解説する。
「人民解放軍は中国共産党の軍隊。腐敗した党への不満が高まるなか、軍に応募してくる若者は少ない。一人っ子政策の影響で、軍人の親は『党に人質を取られた』と思っている。中国の愛国教育は、日本とはまったく違う。外に敵(=日本)をつくり、国内の不満をそらす手段。自衛官の多くは今でも『国のために死ねる』という思いがあるが、中国軍人には『自分が犠牲になる』という気持ちはないだろう」
そして、日本の政府首脳にアドバイスする。
「中国人が事実と違う歴史問題などを持ち出して、大声で騒ぎ立てるのは常套手段。それに沈黙してはダメだ。腹をくくって『やるならやるぞ』ぐらいの気合を見せるべき。一般兵士と軍幹部、一般国民と共産党を分裂させるような、戦略的思考で対応すべきだ」
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