明日から戦争がはじまるそうな
その日、日本はどんな顔をしていたか。国が何を決めたか、誰が批判したか。
事実は刻まれる。
半面、空気、匂い、「顔つき」は消えていく
▼「ぜいたくは素敵
(すてき)だ」。
第二次世界大戦中、こんな落書きがあった。
一九四〇(昭和十五)年、国民精神総動員中央連盟が発表したスローガンの「贅沢(ぜいたく)は
敵だ」に「素」を加えた
▼「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」の立て札。
しばしば誰かが「工」の文字を黒く塗った。
「夫が足らぬ」▼上っ面な「歴史」から
にゅっとはみ出る心の澱(おり)。
叫び。臭み。
それもとどめおくべき記憶であろう。
一日、集団的自衛権の行使を認めることが閣議決定された。
この日の澱を
残したい
▼「明日戦争がはじまる」という詩を人に教えられた。<まいにち満員電車に乗って/人を人とも思わなくなった/インターネットの掲示板のカキコミ
で/心を心とも思わなくなった/虐待死や自殺のひんぱつに/命を命と思わなくなった/じゅんびはばっちりだ/戦争を戦争と思わなくなるために/いよいよ明
日戦争がはじまる>
▼宮尾節子さんという詩人が書いた。
最近公開されネットで広まったと聞く市井の詩。
「戦争のじゅんび」なぞ真っ平だが、昨日の気持ちは
あの落書きのようにこの市井の詩に残るかもしれぬ。
「人、心、命」が軽く扱われる状況への悲しみと怖(おそ)れ。
その歪(ゆが)んだ表情こそ昨日の日本の
顔である。
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